白石の礎・初代片倉小十郎景綱公

伊達の片倉

「伊達の片倉」この言葉が如実に示す通り、伊達政宗を語る時、ここ白石の地に眠る片倉小十郎景綱の功績を忘れることはできない。
初代片倉小十郎景綱は弘治三年(1557)、長井に生まれた。幼少の頃より武術は勿論のこと頭脳明晰にして、判断力も人一倍鋭かったと言われている。伊達輝宗(正宗の父)の家老、遠藤基信[もとのぶ]は、は、その才能をいち早く見抜き、景綱を当時九歳の梵天丸(政宗の幼名)の近侍とするよう進言した。時に景綱十九歳。すでに異父姉、片倉喜多が政宗の養育係を仰せつかっていた関係もあって、二人の縁は厚く、景綱はその生涯を政宗に捧げ、政宗もまた、最も信頼のおける家臣として景綱を重用した。

景綱の活躍「小田原参陣」

ことに政宗隆盛期の景綱の活躍は目覚ましく、奥羽の覇者を決する会津葦名氏との戦いは勿論のこと、合戦には、ことごとく参戦し、伊達の先陣をきって、その手腕を遺憾なく発揮した。景綱はその後、秀吉の朝鮮役にも従軍し、秀吉から軍船小鷹丸を拝領するなど、その武勇とともに外交謀略の知将として、その名を世にしらしめるまでに至った。
景綱の数多い功績の中でも、特に豊臣秀吉の小田原攻めにおいて彼がとった行動は、大英断であったと言えよう。当時秀吉は、九州を平定し、天下統一に向って領土を次々と支配下に治めていた。それは、まさに飛ぶ鳥を落す勢いであった。そして遂に天正十七年(1589)、秀吉は、小田原の北条征伐を決め、東国の諸大名に小田原攻めの参陣を命じた。この命は、白河の関を越えて政宗のもとにも当然の如く届いた。

しかし、その頃の秀吉の力量を見抜ける者はまだこの東国にはおらず、秀吉の命に従って、参陣すべきか否かをめぐって、政宗重臣の意見は真っ二つに分かれた。伊達家存亡の決断が迫られたこの時、政宗が悩みに悩んだあげく最後に意見を求めたのは、他ならぬ片倉小十郎景綱その人だったのである。景綱は一寸の迷いもなく秀吉方への参陣を強く進言し、政宗は、その意見を取り入れ、伊達家を安泰に導いた。
「秀吉の勢い莫大なり。譬えば夏蠅のごとし。一度に二、三百打ち潰し、二度、三度までは相防げども、いや増しに生じ来たり、その時の至らざれば尽きず、今敵対すること、御運の末かー」 これは景綱が政宗に進言した時の言葉である。何とも的を得た表現ではないか。この言葉によって政宗がどれほど勇気づけられ、心を奮いたたせたことであろうか。

また、小田原参陣当時の有名な話として、こんなエピソードも残っている。秀吉は、景綱の力量を高く評価し、三春の旧田村領五万石を下賜しようとした。しかし景綱は主君伊達家に忠節を欠くを理由にこれを固辞したのである。もし、この時、秀吉の命に従って三春の城主となっていたならば白石の歴史は、どんな変遷を辿ったことであろうか。

東北を代表する武将

さらに景綱は大森城、亘理城を経て、慶長七年(1602)十二月、白石城一万三千石(後に一万八千石)を拝領した。その後、「一国一城の令」によって伊達藩に二つの城の存在が認められるべくもなかったのであるが、白石城だけは、例外中の例外としてその存続を許可された。こんなところにも、当時景綱が伊達家の一家臣ではなく、東北を代表する武将として、如何に重要視されていたかが伺える。

一本杉に眠る

元和元年(1615)十月十四日、景綱は五十九歳でその生涯を閉じた。それは最後まで主君に忠誠を誓った景綱の静かな眠りであった。政宗は伊達家の柱石として武勲をあげた景綱の葬礼に際し、自からの愛馬を下賜、棺を引かせて、その功臣に別れを告げた。そして景綱の遺骸は、傑山寺に埋葬され、敵にあばかれないように、あえて墓石を造らず一本の杉を墓標にしたといわれている。戒名は「傑山常英大禅定門」後に「傑山寺殿俊翁常英大居士」と諡(おくりな)された。
景綱役として六十五年後の延宝八年(1680)、片倉家三代景長(かげなが)は、景綱の命日にあたる十月十四日、白石城が見渡せる白石郊外愛宕山に初代景綱を分骨、二代重長の墓を改葬した。こうして愛宕山は初代景綱から十代宗景までの廟所(十一代目以降は傑山寺片倉家廟所)として、十体の阿弥陀如来像が横一列に並んでいる。

今、初代片倉小十郎景綱の墓標である一本杉の梢を見上げて立てば、それは天に向って亭々と真直ぐに伸び、まさに景綱の生きざまそのものを感じざるを得ない。景綱が築きあげたこの白石に生を受けたことを感謝しつつ、いかなるときも自らの信念を貫き通した彼の志を、私達は、しっかりと後世に伝えていきたいと願うのである。


片倉家の墓(境内)

初代片倉小十郎景綱公位牌(傑山寺)
戒名は「傑山寺殿俊翁常英大居士」

本堂の伊達家の家紋
片倉家菩提寺により使用が
許されています。

白石城(益岡公園内)

初代片倉小十郎景綱公の墓標
「一本杉」(境内)

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